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【どうぶつ情報局】見えない脅威~感染症~(2019/01/18 配信)
人と動物の架け橋をめざす本学は、WEB限定企画「どうぶつ情報局」と題して
季節折々の人と動物の暮らしにまつわるコラムを配信しています。
今回担当するのは「寄生虫学研究室」の内田 明彦 教授です。

現代は「感染症の時代」

 


画像提供:福岡県保健環境研究所

今も、世界中のどこかで感染症が発生しています。
数年前は、アフリカでエボラ出血熱、ブラジルではジカ熱、中国で重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が発生しています。日本でも数年前には東京でデング熱、昨今はインフルエンザ、ノロウイルスによる食中毒、西日本地域でのSFTSなど、さまざまな感染症のニュースが毎日のように報道されています。


感染症との闘いは新たな課題へ

人類は歴史上、その出現から現在に至るまで、感染症と共に過ごしてきたのかもしれません。しかし、1929年にイギリスのフレミングによりペニシリンが、さらにアメリカのワックスマンによりストレプトマイシンという、細菌に絶大な効果がある抗生物質が発見されたのを機会に、人々は感染症の時代は終わったと思いました。しかしそれはほんの数十年のことでした。その間に我々は、抗生物質の効かない微生物を作り出してしまったのです。これがいわゆる「薬剤耐性菌の出現」です。




画像はイメージです

社会構造の変化が背景にある感染経路

我が国は経済成長のおかげで生活が豊かになり、寿命も伸びて世界で類を見ない高齢化社会になりました。
さらに15歳以下の子どもの数よりも犬猫の飼育頭数が上回るなど、少子化を補うかのように、動物と居住空間を共にする生活は珍しいことではなくなりました。
また、公害問題が解決して本来の自然が戻ってきた一方で、高齢化に伴い農業や林業に従事する人々が少なくなりました。
その結果として、野山は荒れ、野生動物が増えて山林や農地に被害が出ており、地方自治体はその対応に苦慮しています。 
そして、これらの野生動物が保有している病原微生物が直接、あるいはダニなどを介してヒトやペットに感染症を広げています。

動物が持っている病原体が、人に感染する経路は二つあります。
一つは病原体を持っている動物と接触するか、病原体を持っている排泄物を誤って取り込むことにより感染する経路です。
もう一つは、ダニや蚊など吸血動物を介して感染する経路です。 


怖がって全てを拒絶することは不可能


画像はイメージです

ここまで怖い話ばかりとなってしまうと、全てを拒絶した生活をしたらいいのかとなりますが、自然の中で生きている私たちにとってそれは不可能です。


動物を愛し、共に生きていく上で必要なのは正しい知識です。
本学の寄生虫学の授業では蚊やノミ、ダニなどイヌやネコに寄生する虫について勉強します。 また、公衆衛生学の授業では疫学、予防衛生について学びます。
動物看護師はこれらの正しい知識を基に、適切な対策を飼い主さんに伝える役割を担っています。



執筆担当教員

内田 明彦

内田 明彦 教授

獣医学博士・獣医師

麻布大学名誉教授。元(公財)目黒寄生虫館 館長。
学生とともに八王子市のマダニの生息状況を調査。


<教育・研究業績はこちら>